ある日、彼と出掛けることになった。
休みの日に、だ。
なにやら、
行きたい場所があり、そこはひとりでは行きにくいとのことだった。
前日に言われたから、服を新しく買ってオシャレすることできない。
その夜は、一人でファッションショーをするはめになった。
別になにか意識することはないけど、
ただオシャレがしたかった。
なんてことはない。
当日は花柄のワンピースを着ていった。
2人の中間の駅で待ち合わせをすることになった。
いつも少しだけ早く到着するようにしている。
待ち合わせ場所に行くと既に彼はいて、
私より先にいることが
なんだか、少しだけ嬉しかった。
彼は淡い青の服を着ていた。
薄あさぎ色というらしい。
私の知らないことを、たくさん知っている彼は
電車での移動中もいかんなく発揮した。
「電車からこの景色は当たり前に見るけど、その場所を歩くことはないって考えると、感慨深いよね」
と。
また私にはわからないようなことを言っていた。
彼に連れられた場所は、神楽坂のカフェ。
そのお店は3階にあって、1階は別のお店だった。
そこのフレンチトーストがどうしても食べたいということを言っていたと思う。
正直、なんの話をしたかあまり覚えていない。
ただ、何度も考えていたことは覚えていた。
『なんで私だったんだろう』
『なんで誘ってくれたんだろう』
私服で、晴れた日の休日に、わざわざ神楽坂のカフェでお茶をしたのだ。
これは、端から見たら、
立派なデートだ。
今までは、あくまでも『仕事』というフィルターがかかっていた。
だから意識なんてしたことはなかった。
けど、
今日は休日で、
晴れてて、
私服なのだ。
端から見たら
立派なデートだ。
でもそんなこと言えない。
だから、ひたすら考えていた。
考えれば考えるほど、
緊張していた。
こんなはずではなかったんだけど…
ただ、とても楽しかった。
彼も笑ってくれている。
彼の気持ちなんてわからない。
楽しかったかどうかはわからなかったけど、
楽しくあってほしいと、思った。
太陽は上空を横切っていき、
あっという間に夜が来た。
なんて不公平なんだろう。
仕事の時は、あんなにゆっくり時間が過ぎるのに、
彼といるときは、こうも一瞬で過ぎるのか。
解散になる前、
「わかった。やっぱ君といると楽しいわ」
そんなことを笑顔で言われた。
その言葉が、すごく嬉しかった。
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